相場考察
今月の相場考察
日本市場
日経平均株価
日本経済は緩やかに安定成長
企業業績は顕著だと言えます。
雇用環境は良く、所得も堅調に推移。
誰がどう見ても景気が良いと判断できる相場だと思います。
今後も緩やかに景気拡大が続くと見られており、短期的な調整はあるかもしれませんが底堅く推移するとの見込みです。
3つのリスク
先月は相場の懸念材料として、北朝鮮情勢、安倍政権の危機、米国FRBのバランスシート縮小の3つのリスクがありました。
それらの問題ですが『国連における北朝鮮への制裁案可決』『衆議院選挙での自民党の大勝』『バランスシート縮小が無難にスタート』という進展があったため、リスクが消えたかのような状況に変わりました。
これを受け、外国人投資家はそれまでの7週連続売り越しから5週連続買い越しへと転換しました。これが現在の相場を下支えしていると言えます。2017年の外国人投資家は累計で1.6兆円の買い越しとなりました。
株式市場全体では日銀、年金、外国人、自社株買いの買い越しに対して、個人投資家とその注文を受けた投資信託が売り越す形となっています。
米国市場
S&P500指数
異常な安定性と低ボラティリティ
日本同様、株式相場は良好です。
しかし、ずっと安定して上昇し続けてきたことが不気味にも感じられるのではないでしょうか。
年の前半は暴落警戒感が強く感じられましたが、後半に入り相場の影響もあり緩みが感じられます。いつまで続くのか明確な判断が出来ない状況です。
2016年10月までの801ヶ月はS&P500の年平均リターンは8.6%、ボラティリティは14.3%
一方、2016年11月から2017年10月までは年平均リターンが21.2%にも達します。
ですが、ボラティリティは3.9%と著しく低い状態で、それまでと比較すると異常な状態だと感じます。
金融引締は無難にスタート
FRBはリーマンショックから立ち直るために4.2兆ドル(約470兆円)のお金を市場にばら撒きました。
そして景気が過熱しないよう、そのお金を2017年10月から引き上げ始めました。これがニュースで言われているバランスシートの縮小です。
10月はわずか56億ドルのみで、金額が小さく金利や相場への影響は僅少でした。
1年後には最大で月500億ドル(年間6,000億ドル)に達する見通しで、金額が大きくなるにつれて、金利上昇や相場へのマイナス影響などを見極める必要があります。
次期FRB議長はパウエル現理事
2018年2月で任期が切れるイエレンFRB議長の後任はパウエル現理事に決定しました。
現在イエレン議長が取られている景気拡大に沿って緩やかに利上げを進めるという方針をそのまま引き継ぐ見通しです。
ちなみに、パウエルさんはどういう人かと言うと、弁護士資格を持ち、米系投資ファンドカーライルグループの共同経営者を務めた経歴の持ち主です。FRB理事職就任以来、全てのFOMCで賛成票ばかりを投じてきたthe 無難な人です。
懸念材料
現在、懸念がある事としては小型株、ダウ輸送株(景気敏感セクター)などの先行型株価指数が、高値を更新できずに頭打ちが続いているのが気がかりと言えます。
今はハイテクセクターの上昇率が非常に高く、セクターに偏った過熱感が予想されています。
欧州相場
英FTSETM100指数
欧州市場は順調に景気回復
ユーロ圏経済は17四半期連続で実質GDP成長率が上昇しています。以前にも増し力強く景気拡大が続いています。
スペインの情勢ですが、カタルーニャ自治州で行われた住民投票は、独立賛成が圧倒的多数を占める結果となりましたが相場への影響は小さいよつです。
金融緩和は少ない額で長期間
ECB理事会で、2014年6月から続いている金融緩和政策の縮小計画が公表されました。
現在の資産買い入れ額を月600億ユーロから月300億ユーロに縮小するものの、資産買い入れプログラムは2018年1月末から9月末まで延期されます。
必要があれば買い入れを再度延長する点も強調されたので、市場に安心感を与える結果となったようです。
ECBはユーロ高が過度に進み、輸出業などへマイナス影響を及ぼすことを懸念していて、金融緩和の終了には慎重な姿勢を見せています。
欧州でも、目立ってこれといった大きなリスクは無いまま経済は上向きに進みそうです。
新興国市場
全体的に上向き
堅調なアメリカ、欧州、日本に伴い、新興国市場の資源依存度の高いロシア、ブラジルなどの回復が目立ってきました。
これは資源国特有の、景気はエネルギーを消費する先進国の景気に左右されるためです。
ですが、欧米は金融引締に入っていくため、徐々に引き締められる金融環境が、新興国への投資抑制へと繋がる可能性には注意が必要かもしれません。
ブラジル
景気は以前良好です。株価は史上最高値圏を推移している状態です。
引き続き景気は回復傾向。雇用拡大が続いていて、家計消費も上向きです。
ですが、ブラジル経済およびブラジルレアルは世界景気、資源価格、米国の金融政策に影響を受けやすい点には注意が必要です。
中国
中国実質GDP成長
経済成長が減速傾向にあります。7-9月期の実質GDP成長率は前年比+6.8%となっており、安定推移。
企業業績の回復もあって、所得の改善から消費が底堅く、景気を下支えしている状態です。
インド
世界的な株高を背景に、SENSEX株価指数も過去最高値をマークしています。
ですが、国内の消費者心理が悪化するなど、経済成長が減速傾向から脱することができていないのが懸念点です。消費心理が世界的な基準とズレています。
新興国によく見られることなので、さらなる経済発展を遂げるためにも、宗教と経済をどれだけ理解できる国民が多く現れるか、政府が主導となっていけるかが、課題として続きます。
データ引用Bloomberg.com、SBI証券|株・FX・投資信託・確定拠出年金・NISA